ラブトランジット シーズン2の評価とその理由を考察

ラブトランジット2

Amazonプライムビデオの番組「ラブトランジット シーズン2」の評価をデータや資料をもとに考察していきます。シーズン1との違いやシーズン2で評価が低くなってしまった理由を、制作側の環境や編集方針・最近のタイパ重視の流れも含めて考えていきたいと思います。

AmazonレビューとGoogle検索数からみるラブトラ2の評価

ラブトラ2の客観的評価のため、シーズン1と比較してAmazonレビューとGoogle検索数の変化から見ていきます。

Amazonレビューの評価は前作を大きく下回る

Amazonのレビュー点数、件数ともにラブトランジット1より下回りました。今回はライトに観られるように人物描写が少なくMCの声を映像に被せて実況解説をする編集手法であったため、レビューを熱心に書く視聴者には前作と比較すると評価が低く、レビューを熱心に書くようなコア層のモチベーションすらも下がってしまった可能性があります。

点数の3.2という数字は決して低くないのですが、シーズン1が良すぎたため比較して低くなっている部分もあると思います。レビュー件数が約1/4程度まで減っているのは厳しい結果です…

検索人気では上回る

下図はGoogle Trends(Googleキーワード検索の人気度)のグラフです。

ラブトランジット1の配信時よりシーズン2は検索人気が上回っています。シーズン1が好評価だったことやシーズン2での大規模広告(テレビCM、渋谷駅・新宿駅・渋谷宮下パークでの広告)が影響していると考えられます。

検索数の増加で話題性では前作を上回ったものの、レビュー点数や件数が低くなってしまった理由を考えていきます。

改めてバチェラー、バチェロレッテの注目度や認知度は凄い。

編集スタイルの大幅な変更と副作用

シーズン2では大幅に編集スタイルが変更されました。

  • 1話の登場シーンで女性が5人全員いる状態で男性の入場だけが放送され、ラブトランジットならではのX(元恋人)からの手紙が最初は全員分ではなくフォーカスが当たる人物の順番で編集された
  • 時系列入れ替えの多用
  • スタジオMCの声が常に入っていて参加者の会話音声と被る
  • 会話シーンの削減 シーズン1よりも参加者同士の会話シーンが大幅に短縮され、動画の尺も1話から8話の合計で45分短くなった(特に1話と2話の分数が大きく減っていました)
  • 最近の恋愛リアリティーショーでは珍しいヒール役の編集

MCの声を常に被せる編集は恋愛リアリティーショーというよりバラエティ番組のようでした。どうせならワイプで画面の隅にMCの顔も写して「ちょっと待てボタン」(相席食堂)があっても良かったかも。

ライト層へ向け「テンポよく」「わかりやすく」「予想外の結末」

この編集方針の変更は、番組の尺を短くしてテンポよく観られるようにする、常にスタジオMCの声で実況やツッコミを入れることで笑うポイントや状況説明を加えてわかりやすくする、会話を削ることで予想外の結末を演出しやすくする、という目的があったように思えます。これは明らかに恋愛リアリティーショーをあまり観ないライト層向けの編集です。

感情の動きを削ることによる大きな副作用

上述のテンポよく、わかりやすく、予想外の結末を演出することによる大きな副作用も生まれています。例えば会話シーンを映しすぎると最終回のバスの選択時に参加者がどのような判断をするか視聴者が想定できますので、「予想外の結末」を演出をしたい場合はバスに乗るか乗らないかの核心となる会話が事前に行われていた場合はカットをする必要があります。

しかし会話のカットを行うことによる大きな副作用は、参加者の感情の動きがわからなくなることです。シーズン2では極端と言えるほどの会話のカットにより恋愛リアリティーショーの醍醐味である「参加者の感情の動きを観察する」という点が抜け落ちていました。

参加者のキャラクターや感情がわからないと視聴者としては感情移入や共感ができないため最後にカップルが結ばれたとしても「知らない人と知らない人が結ばれた」となり感動が大きくなりません。さらに、MCの声が常に入っているため視聴者が感傷に浸る時間も削られていました。

シーズン1では細かな感情の動きを描写していたため、最後のシーンでの大きな感動が生まれていました。

シーズン1で良かった部分や、恋愛リアリティーショーを好きな人が求める人物の感情描写が犠牲になっているのがもったいないなと思いました。
もしかしたら会話が薄くて配信できなかったのかもしれないですが…

ラブトランジットならではの長所も薄れた

ラブトランジットはX(元恋人)と参加するという特殊な設定の番組のため、シーズン1では以下のような長所がありました。

  • 1話のXからの手紙を読むシーンで最初から参加者の感情の動きが読み取れて、視聴者に参加者のキャラクターが早い段階で伝わりやすくなる
  • 新しい恋を探さなくても、Xと向き合う時間を作ることで参加者が何もしていない時間を減らすことが出来る(参加者の過去と向き合うシーンをみせやすくなる)

しかしシーズン2の編集では1話では手紙シーンを一部のみ放送し残りのメンバーは後から放送するという手法を取り、会話のカットも多かったためラブトランジットならではの長所が薄れてしまう内容になりました。

元恋人からの手紙を読むルールは、従来の恋愛リアリティーショーの序盤に感情が動かない問題を打破する画期的な仕組みですが、それが弱まっていました。

レビュー点数が下がり、件数も少ない理由

恋愛リアリティーショーならではの感情のリアルな動きを観察することができないことや、それによる最終回のカップル成立・不成立による感動も大きくならないためとても薄味の番組になっていると言えます。作品自体への印象が薄いため、視聴者がAmazonレビューを熱心に書くモチベーションが沸かずシーズン1と比較してレビュー件数の大幅な下落に繋がったと言えます。

強烈な印象があると賛否両論になったとしても様々な意見のレビューが投稿されますが、今回は笑いどころはいくつかあったもののレビューを書きたいほど印象が残らなかったのかも。

バチェラーシリーズを超える高評価から方針の変更が生まれた理由とは

冒頭の表の通り、ラブトランジット シーズン1はAmazonのレビュー点数4.3とプライムビデオ作品の中でもかなり上位評価をされている作品になりました。同じプライムビデオで配信されている恋愛リアリティーショーのバチェラー/バチェロレッテは合計8シーズン配信していますが最高点数は3.7(バチェラー1、バチェラー5、バチェロレッテ1の3作品)となりラブトランジット シーズン1がどのシーズンよりも上回っています。

これだけ高評価の作品がなぜ方向転換を行なったのか、番組のスタッフさんを調べてみました。

制作会社スタッフの上層部は続投

スタッフロールを見るとシーズン1とシーズン2ではディレクター側のトップである総合演出は過去にAbemaの人気恋リア「オオカミちゃん」シリーズを担当していた大島明さんで同じ、プロデューサー側のトップであるエグゼクティブプロデューサーはTBS時代に情熱大陸を担当していた杉田浩光さんで同じとなっているので制作側で権限を持つスタッフさんはシーズン1から続投になっています。にもかかわらず、これだけ大きな編集スタイルの変更が起こった理由は制作側の思惑とは違う所になるのではないかと考えられます。

番組制作の発注側であるAmazonプライムビデオ側の情報を調べてみると以下のような記事が出てきました。

プライムビデオの責任者がライト層を重要視していると発言

2024年4月、日経新聞系列のメディアサイト「日経クロストレンド」にてAmazonプライムビデオジャパンの責任者(カントリーマネージャー)の児玉隆志さんのインタビューが掲載されていました。
記事内で、児玉さんは以下のように発言していました。

我々が新しいお客様を獲得していく上では、動画をあまり頻繁に見ないライトユーザーを取り込むことが重要になる。
(中略)
ライト層に受けるコンテンツとは何かということを、もっと突き詰めて考えていかねばならない時期に来ていると感じています。

引用元 Prime Video WBCから学んだこと、ボクシング中継に力を入れる理由

動画をあまり観ないライト層に受けるコンテンツを考えているとのことで、今回のラブトランジットがシーズン2でライト層を意識した編集に変えられていることに繋がってきます。

あくまで推測ですが、今回の会話を大幅にカットしたライト層向けの編集方針は制作を依頼したAmazonプライムビデオ側からの要求であったと考えられます。

ビジネスなので再生数の最大化のためライト層を取り込む自体は企業として真っ当な姿勢ですが、もう少し前作の良いところや恋愛リアリティーショーならではの描写を残して欲しかったです。

タイパ重視を恋リアで実現したかった?

近年はタイパ重視という流れもあり野球やサッカーなどのスポーツでも試合を全て観るのではなく短く編集されたハイライトだけを観る視聴者が増えています。

先述のプライムビデオ側の責任者の方のインタビューにて、会員一人当たりの視聴本数や視聴時間が減ってきているという記載もあることから、今回のラブトラ2は、番組全体が切り取りの多いハイライトのような構成でタイパを重視して制作が行われた可能性もあります。

上の表は2024年に配信された恋愛リアリティーショーとラブトランジットの動画分数の比較です。

同じプライムビデオのバチェロレッテ3、Abemaのシャッフルアイランド5、Netflixで世界的にヒットしたボーイフレンドと比較してもラブトランジット2の動画分数は50分以上短いことがわかります。ラブトランジットシーズン1から比較しても45分(おおよそ1話分)短くなっていて、会話シーンや人物描写の少なさが数字でも現れています。

ライト層、コア層の両方に高評価される恋リアの特徴

2024年にヒットした恋愛リアリティーショーのボーイフレンド(Netflix)では、感情の繊細な描写や参加者たちの悩みを打ち明けるシーンがありつつも、笑えて泣けるシーンもあり恋愛リアリティーショーとして完成度が非常に高い作品となっていました。ボーイフレンドは普段恋愛リアリティーショーをあまり見ないライト層からの評価も高い作品となりました。
他にもNetflixのあいの里では、あいのりスタッフの制作でライトに観ることができる部分と人生観を語るシーンの両方の要素を持ち人気です。

両作品に共通するのは、バラエティ番組の要素と感情や価値観が見えるシーンのバランスが良いという点です。感情や価値観の表現ばかりだと重くなりすぎてしまうので、途中で演出やMCのトークで笑いの要素を入れて物語に緩急をつけています。恋リア100%のシーンもあればバラエティ100%のシーンもあり視聴者が飽きない構成になっていました。

ラブトラ2では、どのシーンもMCの声を被せていたため恋リア50%、バラエティ50%のまま進行していきメリハリがなくなっていました。

コアファンを置き去りにしてしまうと再生数が伸びでも一過性となってしまうので、ライト層とコア層の両方を満足させるバランスが大事ですね。

参加者のタレント割合の増加は影響があったか

ここまでは主に編集面に注目しましたが、最後に参加者についての考察をしていきたいと思います。

ラブトラ1では、参加者の中でキョウヘイ(アイドル)、マイ(俳優)の2人がタレントとして活動しているメンバーでしたが、ラブトラ2では女性メンバー5人全員と男性メンバーのセカイ(元俳優で現ジムトレーナー)の6人がタレント経験者で過半数となる構成でした。

タレントが増えたことからも、Abemaの恋愛リアリティーショーのような参加者が派手に動く番組になっているシーンがありました。具体的にはエリカのリアクションの大きさや涙のシーンの多さ(部屋で一人でいるときに頭をぶつけてもリアクションはしなかった)、セカイとゆづきの積極的なアプローチ、ももの初回の思い出の地デートでのおにぎりなど、恋リアという番組の趣旨を強く意識していたように見えます。
しかし、会話シーンの少なさは参加者の動きと関係なく番組スタッフによる方向性として行っているものでタレントさんの多さによる編集方針への影響は小さいと言えます。

ラブトラ2は配信前に参加者の顔と名前を公開していてタレント経験者が多いことがわかったので「これはシーズン1と全然違ってAbema風かな…」と予想していましたがその通りになりました。

一般募集の参加者はいなかった?

シーズン1では最終回にシーズン2の参加者募集サイトアドレスが紹介されていました。
http:www.lovetransitcast.jp

しかし、

  • 上記募集サイトは現在アクセス不可能になっている
  • シーズン2の最終回では参加者募集の告知が行われなかった
  • シーズン2でXを誘った側が全員タレント経験者だった(エリカ、もも、セカイ、ゆきこ、ミヅキが誘った側)

以上から、シーズン2に一般募集からの参加者はいなかった可能性が高いです。誘った側の5人はキャスティング事務所からの紹介や芸能事務所からの紹介、スタッフさんの人づてなどを使って集めたことが想像できます。

参加へのハードルの高さ

ラブトランジットは元恋人Xと同時に参加するという設定上、元カップルの双方が恋人がいない状態でスケジュールも空いていて、なおかつビジュアルやキャラクターがスタッフさんの審査を通るレベルである必要もあり、他の恋リア番組よりも参加のハードルが高い番組と言えます。

恋リアに出るだけでも勇気がいるのに、さらに元恋人を誘って一緒に参加するのは難しいですよね。出てくれたメンバーに感謝です。

シーズン3をもし収録する場合は参加者はできるだけ一般人比率を高めてもらえると嬉しいです。

最近では見かけないリスクのあるヒール役編集

ラブトラ2が他の恋愛リアリティーショーと違う点として、エリカが明確なヒール役として編集をされていた点です。最近のリアリティーショーでは参加者へのネットの誹謗中傷問題があるため悪い部分が多くなりすぎないように編集するのが主流ですが、エリカに関しては経歴が他参加者と違い、

  • 大手芸能事務所のオスカープロモーションに所属していた(現在はオスカー元幹部が独立した事務所に所属)
  • Abemaの恋愛リアリティーショー「こじらせ森の美女」に参加経験あり(2019年〜2020年配信)
  • ロンハーのトラップガールとして出演歴あり

であることから、ネットの心無い声を見ない・気にしないような対策ができているため、最近では珍しいヒール編集が可能であった特殊な例といえます。とはいえ誹謗中傷は精神的ダメージが大きいため、非常にリスクのある編集スタイルであることは間違いないです。

そして、最後は結ばれなかったヒール役のエリカを前半の主役としてシーンを多くしすぎてしまったのもメンバーの深掘りができていない原因の一つであったと考えられます。

配信で流れた部分だけだとエリカを褒める要素が少なすぎてヒヤヒヤしながら観ていましたが、本人が気にしていないと思いたいです。

改善点も見られた

問題点を指摘してきましたが、悪いところばかりではありません。シーズン1と比較して以下のような改善点も見られました。

  • デート種類の増加:山梨県で果物狩り、千葉県でグランピング、茨城県で日の出などホカンスの横浜みなとみらいから離れた地を訪れるデートも多くありました。
  • MCメンバーの変更:バチェラーで好評価を得ている指原さん、バラエティのMCで活躍中の川島さん、長谷川さんという豪華メンバーを起用した人選。

デート場所の種類が豊富でビジュアル面はとても良かったと思いました!
芸能界で恋リアMCが特にお上手な指原さんを起用してくれたのは嬉しかったですが、編集方針がシーズン1と近ければもっと活躍できたかもしれません。

【まとめ】ラブトラ2をどう捉えるべきか

結論として、筆者はラブトラ2を「表向きは恋愛リアリティーショー、実体はバラエティ番組」であると認識することにしました。恋リア好きから見ると感情の描写や人物像の深掘りが少ないため薄味に感じますが、MCが状況を常に説明してツッコミを入れているため笑いどころもあり、ライトに視聴をする方や初めて恋リアを視聴する方にとっての入門編の番組としての価値はあると思います。

色々言いましたが、シーズン3があったら必ず観ます!

恋愛リアリティーショー好きでブログを開設。
データをまとめたり、考察をしています。
Xでも恋リアに関する情報発信をしています。
Xはこちら

魚類をフォローする
ラブトランジット2
魚類をフォローする
ギョルイの恋リア感想考察